M&A「そのときどうする?」

(提供:株式会社ストライク)

会社を譲渡したら、共に働いてきた役員や社員たちにどう思われるか不安

Q 会社を譲渡したら、共に働いてきた役員や社員たちにどう思われるか不安です。
創業して約40年、地味ながらもコツコツと金属加工業を営んできました。これまで会社が潰れかねない危機は何度もありましたが、そのたびに全社員が一丸となって乗り越えてきました。お陰様で人員整理をすることもなく経営を続けてこられ、長年の社員ともなれば、もはや戦友といった存在だと感じています。
ただ、最近は私自身の馬力やリーダーシップが衰えてきました。後継者がいないので、社員たちのためにも業績が好調なうちに元気な経営者にバトンを託したいと考えていますが、ひとつ気がかりなのは皆の気持ちです。会社を譲渡すると、役員や社員たちに「社長は自分たちのことを見放した」と思われるのではないでしょうか。
(愛知県 金属加工業 K・Nさん)

 

A 不安に思う方は多いですが、実際には杞憂で済む場合がほとんどです。
愛情を持って会社や従業員を育ててきた経営者の方ほど、同様の不安を抱えて、ご相談にいらっしゃいます。しかし、実際には杞憂で済む場合がほとんどです。
多くの従業員は、M&Aに伴い自身の処遇が悪くなるのではないかと不安を感じます。しかし、事業承継型M&Aの場合、M&Aの前後で従業員の雇用条件は変化させないことが基本です。それどころか社名も当面は変えずに、社員や取引先から見てもあまり変化を感じない「静かなM&A」にすることが成功の秘訣であったりします。
私が昨年に担当した会社のオーナーも、後継者不在のため売却を志向されていたのですが、会社の売却に従業員が理解を示し、会社に残ってくれるのかどうかを最後まで心配されていました。
ところが、M&A(株式売却)の最終契約後に従業員に説明をした際、従業員からは「これで安心できました。とても良い会社を選んでいただき、本当にありがとうございます」という意外な反応が返ってきました。「後継者がいないため、社長は高齢になっても引退せずに経営を続けてくれている」「万が一にも社長が倒れたら会社は廃業することになるのでは」という不安を従業員間で抱えていたというのです。お相手が相乗効果を期待できる企業だったため、今後が楽しみとの声も聞かれました。
それを聞いた社長は「私よりも従業員のほうが冷静に会社の行く末について考えていたのか」と驚くと同時に、「感謝されるのは予想外でしたが、最後に本当に良い仕事ができた。これで安心してリタイアできる」と仰っていました。
事業上の相乗効果が期待できる企業をお相手に選べば、従業員のモチベーションアップにつながり、これまで以上に頑張ろうと考えてくれるはずです。何かと心配になられるお気持ちはとてもよく理解できますが、「M&Aにより何を手に入れるのか」を冷静に考えれば、さまざまな心配事は杞憂に過ぎないことが自ずとご理解頂けると思います。
ただし、業績が悪化してからの譲渡となると、従業員の雇用条件が変動したりする可能性も否定できません。会社や従業員の未来につながるM&Aにするには、社長も会社も元気なうちに早めの決断をすることが重要です。